筋膜と筋肉のこり
筋肉が何らかの原因で硬くなり、動きの滑らかさが減って、不快な感覚が生じてくると、「筋肉がこった」と表現されるでしょうか。
以前は、各部位ごとの「筋肉」になんらかの機能異常が起こって、それぞれの筋肉に「こり」が生まれたとされていましたし、体の痛みの原因として、筋肉のこりから発展したトリガーポイントがいわれていました。
ここ10年くらいでしょうか、筋膜の研究が進み、筋膜による連続した構造に筋肉(筋線維)が入り込んで、体の各部が構成されているとされてきています。
その筋膜の構造は隣り合った筋膜間が十分に潤されていて、滑らかに滑りあうことができ、間にある高分子化合物に含まれた水により、循環されています。
その筋膜に、運動による過剰な熱、組織の代謝異常、浸透圧の変化などにより脱水がおこると、筋膜間の滑らかさが損なわれ、そこに含まれる筋肉に過負荷が起こり、こり(トリガーポイント)発生の原因となります。
こりの解消は、組織の滑らかさと本来の長さをを回復させることになります。
筋線維にできたトリガーポイントの過敏さを鎮静することと、短縮した筋線維をもとの長さに戻すことを目的にした、いわゆるトリガーポイント療法やアクティブリリース、等尺性収縮運動など。
高密度化した筋膜の流動性を高めて滑らかさを回復する、筋膜リリース、ポジショナルリリース、筋膜マニピュレーションなど。
背骨の関節(椎間関節)などの機能異常(関節の引っ掛かり)を解消して動きを回復する、マッスル・エナジー・テクニック、スティル・テクニックなど。
機能異常を起こしている組織の状態に合わせた適応手技を用いることで早期の回復が見込まれます。
ただし、慢性的に起こっている筋膜の高密度化、または高硬度に組織変化した筋膜組織では、代謝を改善することで組織変化を促し、数ヶ月から数年の時間を掛けながら対応するようになります。