体の痛みを解説
痛みとは
痛みは、自分の体が傷害されている時に感じる感覚です。合目的に考えれば、自分の体を傷害しないように行動を自制させる感覚です。どこかに異常が起こっているから痛みがあり、異常が進行しないように自制させる感覚です。
つまり「痛み」の感覚の役割を平たく言うと、「痛いんだから、もう止めておけ。」ということになります。
また痛みは、個人固有の感覚であり、急性痛では他者が想像できる痛みと一致することもありますが、慢性痛では、痛みの程度や痛みを起こすきっかけが想像しきれないことがあったりもします。
たとえば、風が吹くと痛む、布団にあおむけで寝ると背中に当たって痛む、台風が発生すると痛む、などがあります。
痛みの分類
痛みの原因による分類
痛みを感じる受容器(侵害受容器(しんがいじゅようき)=痛みを起こす刺激を受け取るセンサー)を介するものと、介さないものがあります。
侵害受容器の痛みには、「つねった」、「熱い物に触れた」など病的ではない生理的な痛みと「炎症(ケガを含む損傷)」による痛みが含まれ、「侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)」といいます。
侵害受容器を介さない痛みには、神経障害(神経障害性疼痛)による痛みがあり、そのほかに、解剖学的に説明のつかない非器質性疼痛(ひきしつせいとうつう)と呼ばれている「原因不明の痛み」があります。
痛みの部位による分類
痛みの部位がはっきりしていて、疼く痛み、刺し込む痛みなどの体性痛(たいせいつう)と、痛みの部位や性質がはっきりしない内臓痛があります。
体性痛には、体の表面(皮膚や粘膜)で感じる痛みと、筋肉、筋膜、関節周囲などの深い部位で感じる疼くような深部痛があります。
また、体表で感じる痛みには、刺激が無くなると痛みも消える「速い痛み(鋭い痛み)」(神経線維のAδ線維で伝わる痛み)と、刺激が無くなっても続く「遅い痛み(耐え難い鈍痛)」(神経線維のC線維で伝わる痛み)があります。
内臓痛に関しては、内臓実質では熱刺激や切断などの侵害刺激では痛みを感じず、管腔臓器の急激な収縮(痙攣)や周辺の膜構造(胸膜や腹膜など)に刺激があると痛みが起こります。
手術などで内臓実質を切ったり焼いたりしても痛みが出ませんが、胃痙攣(いけいれん)などでは激しい痛みとなります。
急性痛と慢性痛
一般に急性痛は侵害受容性痛(生理学的な痛みと炎症性痛みを含みます)で、痛み刺激の解除や損傷の治療とともに痛みは解除されます。
一方慢性痛は、急性疾患の通常の経過以上の長期間にわたる持続する痛みで、痛み以外に様々な症状や訴えをすべて含めた一つの疾患といえます。
トータルペイン
末期がん患者の痛みとして、身体的な痛み、精神的な痛み、社会的な痛み、スピリチュアルペインの4つの痛みがあり、そのすべてを含みトータルペイン(全人的な痛み)と呼ぶことがあります。