筋肉を整体する(後編)

「ところでね、センセ。
前に、“筋肉が硬くなる”とか“筋肉が老化する”って話しされてましたよね。」
「そうそう。疲労した筋肉に、さらに疲労が重なって痛みとか歪みとかが起きるんだけど、
その疲労が溜まり過ぎた筋肉ってのが、正常に新陳代謝出来なくなって老化するんだよね。」
「えぇーっと。。。?」
「つまりね、疲労した細胞が最終的には壊れて、
その壊れたところが正常に生まれ変わることを新陳代謝って言うんだけど、
疲労が溜まり過ぎて細胞周囲の環境が悪くなると正常に生まれ変われなくなるんだよね。
正常な状態って言うのは、年齢なりの健康な状態ってことなんだけど、
20歳代には20歳代の状態があるし、80歳代には80歳代の状態があるんだ。
筋肉も若々しくてヤワヤワな状態から年齢を重ねる事で硬くなっていくんだけど、
年齢以上に硬くて柔軟性の無い状態を老化って言えると思うんだよね。」
「じゃあ、年齢以上に老化するとどうなるんですか?」
「硬いだけで特に問題が起きていなければ、いわゆる“身体が硬い”って状態だよね。
これは筋肉というよりも筋肉を包んでいる筋膜がスムーズに動いていない状態かもね。」
「どういうことですか?」
「筋膜という幾重にも重なった袋状になっているモノの中に、
筋肉や骨が浮かんでいるって考えたら良いかな。
そしてそれぞれがスルスルと滑ることでスムーズな動きが出来るんだよね。
さらに、筋膜の上に神経の末端があって感覚や刺激に対する痛みなんかを感じ取ってるんだ。」
「へぇ、筋膜に神経の末端があって、そこで感覚を得ているんですね。」
「そうなんだ。硬くなった筋・筋膜に神経の終末が巻き込まれて
神経が常に刺激される事で慢性的な痛みが起きてしまったり、
身体を一定に保つ相互作用が乱されたりなんて事も起こるようだね。」
「一定に保つ作用ですか?」
「恒常性とか、ホメオスタシスとか呼ばれてるね。
体温や血圧、免疫、血糖、傷の修復も含まれるかな。
自律神経の働きも乱されたりするよね。」
「そんなのも筋肉の老化と関係あるんですか?」
「あまりはっきりしてはいなんだけど、現実に起こっているよね。
体調悪くて病院で検査したけど何も見つからない。
でも身体をみるとガチガチの筋肉になってたりしてるね。
診断がつかなかったり、○○症候群とか自律神経失調症とか、
最悪は、気のせいや年のせいにさせられたり、
最悪は精神病にさせられたりなんてね。」
「筋肉の疲労って、なんか恐ろしいですね。」
「うん。でも、疲労は常にしていることだし、
疲労で壊れた組織を生まれ変わらせることで正常を保つから、
それはそれで必要なことなんだよね。
ところが、疲労を解消させないでさらに疲労を重ねる事が恐ろしい事つながるんだよね。」
「じゃあ、疲労し過ぎて老化しちゃった筋肉はどうしたらいいんですの?」
「日々の疲労が残らないように、身体の中の環境が悪くならないように、
自分でマッサージしたりストレッチしたりと手をかけてあげるんだよ。
女性が、お肌が荒れるとせっせと手を掛けるのと一緒だよね。
新陳代謝は常に起きているから、邪魔をする疲労が溜まらないようにしてあげる。
そうすることで少しずつ若返ってくるよね。
ガチガチに硬くなってしまった筋肉が少しずつ柔軟性を取り戻してくるんだ。
そうなると、良く分からないいろんな症状も消えていったりするんだよね。」
「やっぱり疲労って恐ろしいんですね。」
「うん。放ったらかしにするとね。」