鍛えないということ

「どうも、よろしくないねぇ。何か変わったことやってます?」
「いえ。別に何にもしてないわよ。」
脚に力が入らない、膝に力が入らない、歩くのが大変だ、という主訴のおばあちゃんです。
太ももの筋肉、大腿四頭筋と内転筋の疲労で十分な筋力が発揮できず
一歩一歩ようやく歩く感じでしょうか。
「そういえば、デイサービスって週に一日?二日?」
「うん。2回行けるようになったから2回行ってるの。」
「そうなんだ。デイサービスで体操みたいな事ってやってるの?」
「うん。館内を2周して、階段で2階までの上り下りを2往復。
これはどうって事無く出来ちゃうのよね。」
「あぁそうですか。他には何かやってますか?」
「あとね、足首に重りをつけて上げ下げやるのよね。
10回って言われてるんだけど割と楽に出来るから30回くらいやってるのよ。
ホントは1キロなんだけどこっそり2キロにしてね。
早く良くなりたいから頑張ってやってるのよぉ。」
「あぁぁ、それはちょっとやり過ぎですよ。
筋肉が疲労で傷付いているところを治れるようにしてるのに
さらに疲労を重ねてるからなかなか治らないんですよ。
鍛えるのを一時止めましょうね。」
「えぇぇ、そうなのぉ?
早く治りたくて頑張ったのに駄目だったの?」
「うん。ちょっとだけ頑張りすぎちゃいましたね。
重さを1キロにして、上げ下げを10回だけにしてね。
そうしたら調子良くなれるからね。」
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「センセ、ここんとこアチコチ身体が痛むんですよ。
でもね、2時間くらいDVDに合わせて運動すると調子良いんですよね。」
「いやぁ、それはちょっとやり過ぎじゃないですかね。」
「そんなことないですよ。だって終わったらスッキリして調子良いし。」
「いや、それはね。ランナーズ・ハイと一緒で脳から快楽物質が出てるだけで
身体自体は充分過ぎるくらいに疲労してると思いますけどね。
だからアチコチ痛くなるんですよ。」
「だって、40台になってから疲れやすいし、身体鍛えないとだめでしょ?」
「日常生活はダラダラしてる訳じゃなくって結構忙しいんでしょ。
日常生活に必要な筋力を保つだけの運動は出来ていると思いますけどね。」
「でも。。。」
「いえ。一旦そのトレーニングを休みましょ。
身体の痛みが治まったらまた少しずつ始めれば十分ですよ。」
「そうなんですか。。。」
「そう。大丈夫だからね。」
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“運動不足”が呪文のように溢れています。
通常の生活を送っている限り、生活で必要な筋力を使っています。
“運動不足”は誰にでもあるとは限りません。
(ただし、本当に運動不足の人もいますけどね)
“鍛える“ことより“疲労の解消”が必要です。
日常生活が運動になり、ため込み過ぎない様に疲労を解消する。
これが大事ではないでしょうか。